某案件の交渉に臨みました。
相手の代理人弁護士は、私の師匠の師匠です。
スターウォーズでいえば、オビ=ワン VS ドゥークー伯爵です。
直前まで緊張し過ぎて吐きそうでしたし、大変に憂鬱でした。
法曹道というのは、フェアであると同時に非常に厳しい道と感じます。
「◯◯先生が言ってるのだから正しい!」とはなりません。
また、「あんなどうしようもない奴の言ってることだから間違ってる!」ともなりません。
どんなに偉い先生でも、あるいは、どんなに下品なゴロツキでも、その主張はあくまで等価に扱われます。
共通のフォーマットとなるのは、法と証拠と論理です。
人種・信条・性別・社会的地位等の属性それ自体による依怙贔屓や差別はありません(一応理念的には)。
その意味で、大変にフェアな世界と言うことができます。
しかし、これは一方で非常に厳しい世界とも言えます。
法律知識に不足があれば、あるいは、証拠の吟味が不十分であれば、はたまた、論理に飛躍・矛盾があれば、依頼者は多大な不利益を被るかもしれません。
全ては弁護士の責任です。
それまでの実績や成果など関係ありません。
どんなに経験を積んできた偉い先生でも、ド新人のドペーペーでも、同じ土俵・ルール・道具で戦うことを強いられるわけです。
何とも恐ろしい世界ではありませんか(どの業界も同じことかもしれませんが)。
重責と多忙に耐えかね、鬱病を患う者は数知れず、廃業に追い込まれる者、自殺する者、不摂生により早逝する者は後を絶ちません。
「法曹道はフェアだ」というこれまでの話と矛盾するように思えるかもしれませんが、法曹界は意外と縦社会です。
司法修習の期の上下を互いに気にする業界です。
このことについて、私はこう考えています。
期が上の諸先輩方は、法曹道という「修羅の道」に長く身を置いています。耐え忍んでいるわけです。
そのこと自体でもって、無条件に尊敬に値するのではないかと。