今聴くと「この作品の何がそんなに問題なの?」としか思えない。
当局による粛清を恐れた、各所から圧力がかけられた、それで初演が撤回された、ショスタコーヴィチの中でも一際難解で前衛的な作品だ、長らくお蔵入りになった幻の傑作だetc.
やれ狂気的なフガートがどうだ、クラスターがどうだ、引用がどうだetc.
本作に纏わる「厨二」心をくすぐる逸話・レトリックは尽きない。
他方で、本作はあくまで絶対音楽・純粋器楽だ。
あんまり「情報」に囚われすぎるような言説には眉に唾してかからねばならない。
改めて本作を聴いて出てくる素直な感想は、冒頭のとおり。
「この作品の何がそんなに問題なの?」
第9の方が遥かに危なっかしい(限りなくアウトに近いセーフ)と思える。
あれは完全に当局に喧嘩を売ってるとしか思えない。
しかし、こちらはどうだろう。
書きたい音楽を書きたいように書き殴った痛快さ、昔の映画音楽的な愉しさに満ちた力作だ。
さながら奇天烈なカーニバルやサーカスを眺めるようで、最初から最後まで飽きることがない。
https://music.apple.com/jp/album/shostakovich-symphonies-nos-4-11-the-year-1905-live/1391153135