バルトークのピアノのための組曲Op.14 Sz.62 BB70を聴きながら帰宅。
久しぶりに聴く作品だ。
先日バルトークについてブログに書いたことから、思い出して聴いてみようと思った次第。
気になって本作についてネット検索してみると、「えっ!?嘘でしょ!?」と気になる記述が、複数のサイトで散見された。
いわく
①「第2楽章:スケルツォ 12音列を用いた下降形の冒頭」
だとか
②本作の2曲目に「十二音技法が使用されている」
だとか。
※問題の2曲目
結論から言うと、いずれも真っ赤な嘘、完全なるガセネタだ。
譜例を確認するのが手っ取り早い。
まず、冒頭1〜4小節目の音列。
12音どころか11音しか書かれていないし、最後の2音はオクターブ違いなので、実質10音しか使われていない。DとG♭が出てこない。
次の5〜8小節目も同様に実質10音しか使われていない。DとB♭が出てこない。曲が始まってここまででDは一度も出てこない。
ちなみに、続く9〜12小節目も13〜16小節目も下降音形だが、いずれも実質10音しか使われていない。
ということで
①「第2楽章:スケルツォ 12音列を用いた下降形の冒頭」
は完全なるガセである。
続いて
②本作の2曲目に「十二音技法が使用されている」
について
たしかに、17〜20小節目、21〜24小節目は、いずれも上昇音形の12音列が用いられている。
しかし
「12音列が出てくる」
すなわち
「十二音技法が使用されている」
とはならない。
一般的に、十二音技法の場合、まず特定の12音列が設定され、そのヴァリアントでもって曲全体を構築していく。
単に部分的に12音列が出てきたからといって、その12音列が曲全体の構成の鍵を握っているのでなければ、「十二音技法が使用されている」とは言えない。
もし、この曲に「十二音技法が使用されている」と考えるのであれば、リストの「ファウスト交響曲」やリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」についても、 「十二音技法が使用されている」と認めなければならない。
「ファウスト」の第一楽章の第一主題には12音が出てくるし、「ツァラトゥストラ」の「科学について」のフガートにも12音が出てくるからだ。
これは一般的な理解・感覚に反する。
というわけで
②本作の2曲目に「十二音技法が使用されている」
もガセネタである。