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フォレスト・ガンプ再鑑賞

名作というのは観る度に印象が変わりますね。

学生時代に観た時は

「知的障害の人間がこんな簡単に何でもかんでも成功するわけないだろ!」

「ジェニーってクズだなぁ」

「ババとダン中尉ってかわいいなぁ」

って感じでした。

箇条書き的になりますが、今回改めて感じたのはこんなこと。

・純粋なフォレストが「理想のアメリカ人」として描かれている(親、国、上官という権威に従順であることがポジティブに描かれている)。

・他方で、リベラル系の人達がめちゃくちゃ馬鹿にされている(フォレストの対比としてジェニーが描かれている。公民権運動や反戦運動に携わる人間が、愚かで下品でモラルのないヒッピーや、暴力的で破滅的な連中として描写されている)。

・IQの低い人間への偏見がすごい(一般的なウェクスラー式であれば、フォレストのIQ75は知的障害ではなく境界知能。この水準であれば、日頃の言動から低IQであることが露骨に分かるようなことは普通ない。フォレストの挙動はどちらかと言うと重度の発達障害っぽく見える。)。

・母親もただの善人ではなく、だいぶ偏った人間に見える(フォレストに対する「あなたは他の子と何も違わない」という発言も、見方によっては、フォレストをありのまま受け入れることをせず、障害という特性を意図的に無視・否定しているようにも見える。校長との面談では、現業の人間を見下す発言も辞さない。また、フォレストを普通級へ進学させるため、校長を自宅に連れ込み校長と寝ているが……フォレストに相応の理解力があった場合でも、彼女は同じことをしただろうか。母親自身もフォレストの理解力の低さや純粋さをいわば利用するようなところがあったのではないか。)。

・今見返してみると、ジェニーはクズではなく、ただひたすら哀れな人に見える(子どもの頃、フォレストと対等に接したほぼ唯一の人間。そんな人が、貧しい南部の農家で虐待されながら育ち、トレーラーハウスに住む祖母に引き取られ、グレていき、破滅の道を歩んでしまう。フォレストを「都合の良い男」と考えて振り回していたのではなく、むしろフォレストに自分は相応しくないと本気で思っていたのだろう。今の私には、一連の行動がクズムーブには見えなかった。)。

・ゴリゴリに思想の色濃い作品でありながら、鑑賞している分には鼻につかず、むしろ感動させられてしまうのだからタチが悪い。監督ロバート・ゼメキスの才能か。

・あとやっぱりババとダン中尉はかわいい。