昨日は、ミュージック・コンクレートを創始したピエール・シェフェールについて書いた。
ミュージック・コンクレートは、人や動物の声、鉄道や都市などから発せられる騒音、自然界から発せられる音等(既成の具体音)を加工して作る音楽だ。
電子音楽やノイズミュージックの下位カテゴリー(一つのジャンル)である。
電子音楽とノイズミュージックの創始者は(諸説あるが)、ルイージ・ルッソロ(1885年4月30日 - 1947年2月4日)。
本日2月4日は彼の命日だ(ちなみにクセナキスの命日でもある)。
単なる偶然なのか、彼の創作歴は、電子音楽とノイズミュージックの「前夜」から「発展」の狭間にすっぽりと収まっている。
ノイズミュージックを本格的に普及させたジョン・ケージの生誕が1912年。
ルッソロがノイズミュージックを提唱し、イントナルモーリという騒音楽器を開発したのが1913年で、亡くなったのが1947年。
他方、フランスのシェフェールがミュージック・コンクレートを創始したのが1948年頃。
また、同じ頃のドイツでは、シュトックハウゼンらにより、具体音ではなく、電気的に生成した音のみを使った音楽(狭義の電子音楽)が作られるようになった。
こうして年表的に眺めてみると、ルッソロは電子音楽とノイズミュージックの先駆者にして橋渡し的な「ビッグネーム」かに見える。
しかしながら、音楽史における彼の知名度は、ケージ、シェフェール、シュトックハウゼンらのそれと比べ、著しくマイナーである。
その理由の一つには、ほとんど作品が現存していないということが挙げられるだろう。
また、彼が創作したイントナルモーリも、残念ながら現存していない。
以下は、1914年にミラノで初演された、イントナルモーリのための作品「都市の目覚め」の蘇演版(1977年にイントナルモーリを復元して録音したものだそうだ)。
当時は、1912年にシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」による調性破壊や、1913年にストラヴィンスキーの「春の祭典」によるリズム破壊で、大騒ぎをしていたような時代。
これが「音楽」として受け入れられようがなかったのは想像に難くない。
ルッソロの活動は30年以上も先取りし過ぎていたようだ。