最近絶賛どハマり中の曲だ。
この曲には何らのドラマも解決もない。
悲劇もなく、喜劇もない。
コッテリ後期ロマン派のようなバタ臭い濃厚な旋律や和声もない。
かといって、擬古典よろしくスッキリ単純明快なわけでもないし、印象主義的でもない。
芋臭い民族主義でもなければ、無国籍・無味無臭の根無草や、前衛過激サウンドでもない。
キャッチーさもポップさもなく、描写的な音楽でもない。
かといって、衒学的・哲学的なわけでは全くない。
決して抽象度の高い音楽ではないが、分かり易いわけでもない。
霧深い冷たく湿った空気、神秘、謎。
今際の際にあって、幸福を噛み締めるのでもなく、人生を讃美してみせるでもない。
それでいて、厭世や諦観でもない。
大仰に人生を総括・意味付けすることなく、ただ終焉の縁に何かがひっそりと佇んでいる。
人生とは案外こんなものではないかと、大袈裟かもしれないが、そう思わせるような不思議な作品だ。