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現代指揮者の4タイプ

私が思うに、現代の指揮者は以下の4種に大別することができる。

①知略型、②時代考証型、③調整型、④先祖返り型である。

概略はこんなかんじ。

①知略型(ブーレーズやギーレン等)

感情や主観ではなく、理知的なアプローチを重視する。特定のフレーズや音色の美しさを磨いたり、情緒的・情熱的に表現を練ることには、さほど関心を示さない。楽譜に書いてあること、その論理や、音楽全体の構築性・バランス感を重視する。細部まで音が明瞭に聞こえる演奏が多いのも特徴。作曲家兼指揮者や現代音楽が得意な指揮者にこのタイプが多かった。ブーレーズやギーレン亡き今(前衛時代の作曲家も大体死んでいるし)、知略型はもはや絶滅危惧種となっている。

時代考証型(アーノンクールガーディナー等)

作曲当時の時代様式や慣習を徹底的にリサーチ・提示することで、解釈の正統性を主張し、説得力を補強しようとするタイプ。これにより、普段耳慣れない斬新な演奏になるという効果が得られることもある(それが狙い通りの効果なのか、単なる副次的な効果なのかは、指揮者によって異なるだろう)。ただ、ピリオド奏法が喧伝されるようになりほぼ半世紀。最近は「ネタ枯れ」感が否めない。

③調整型(アバドヤンソンス等)

現在の主流。オーケストラ団員個々人や共演ソリストの音楽観を尊重し、自身の価値観を一方的に押し付けるようなことはしない「民主的」なタイプ。人間関係の細やかな配慮・根回しや各種雑務、資金集め等の地味な裏方作業にも嫌な顔一つせず従事する。演奏者やソリストからのウケは非常に良く、演奏をソツなく優等生的にまとめる能力が高いのも特徴。他方で、演奏の個性は乏しく、芸術家らしい強烈なエゴを感じさせないため、とかく聴衆には馬鹿にされやすい。しかし、調整型の指揮者のファンを自称すれば、演奏者側の視点を理解しているっぽい、あざとい解釈に流されてないっぽい、上品な演奏が好きっぽい感じがするため、「逆張り」により「通」ぶれること請け合いである。「ヤンソンスが一番好きな指揮者です」とか「正気かよ」としか思えない。

④先祖返り型(クライバーバレンボイム等)

昔ながらの巨匠風のサウンド・奏法・解釈を採用し、リハーサルの進め方等は独裁的・専制的なことが多い。良くも悪くもカリスマ性が高いのが特徴。今日では少数派だが、聴衆のウケはすこぶる良い。ただ、やり過ぎると「フルヴェン(フルトヴェングラー)の猿真似乙」などと聴衆に馬鹿にされ、興醒めされる場合もあるため、注意が必要だ。日本では、バレンボイムが若干スベっている。存命の先祖返り型で一番成功しているのは、ドイツ人指揮者のティーレマンだろう。バレンボイム辞任後のベルリン国立歌劇場音楽監督には、おそらく彼が就任するのではなかろうか。ドレスデンとの契約が更新されなかったし。