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雑記:試用期間中の解雇と本採用拒否

〇基本方針(使用者側)

・試用期間中の労働者を解雇又は本採用拒否したくば、①就業規則に試用期間中の解雇について明記したうえで、②満了時に本採用拒否とすべきである。

∵①の記載がなく、②満了より前に解雇する場合、当該解雇は無効とされるリスクが高くなる。


〇関連裁判例

医療法人財団健和会事件:東京地判平21・10・15労判999号54頁】
【ニュース証券事件:東京地判平21・1・30労判980号18頁、東京高判平成21・9・15労判991号153頁】

いずれも上記①及び②を満たさない事案。解雇無効とされている。

※ただし、上記①及び②を満たさないからといって、必ずしも厳しい判断がなされるわけではない模様(東京地判令3・8・4ウエストロージャパン2021WLJPCA08048005等)。

 

〇補足

試用期間満了前に行った使用者側の意思表示の趣旨について、試用期間中の解雇又は本採用拒否として、選択的・予備的な主張を行うケースも散見される。

しかし、かかる争点の判断が決定打になっているような裁判例は確認できない。

いずれで構成するにしても、試用期間満了を待たずに、その時点での判断材料をもとに意思表示を行ったこと(その合理性・相当性)が問題となる以上、さしたる相違はないものと考えられる(※)。

※【有限会社X設計事件:東京地判平27・1・28労経速2241号19頁】
労働者の地位確認にあたり、使用者による意思表示が、試用期間中の解雇の通知か、本採用拒否の通知かが争点となった(試用期間満了前に留保解約権を行使できる旨の条項なし)。
裁判所は、使用者の意思表示を本採用拒否の通知と認定したうえで、これを無効と判断している。本裁判例の事案においては、上記争点の判断如何に関係なく、労働者の地位確認が認められるという結論に変わりはなかったと考えられる。