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雑記:収去請求における対象物件の特定の程度

 

建物収去土地明渡請求や動産収去土地明渡請求の法的性質について、実務・通説では、1個の訴訟物と解釈されている。

 

すなわち、訴訟物はあくまで「土地明渡請求権」であって、「建物収去請求」や「動産収去請求」に関しては、執行の便宜のため判決主文に掲げるにすぎないという理解である。

 

こう解すると、理論上、請求の趣旨や請求の原因において、「建物収去」や「動産収去」に言及することは必要不可欠ではないとも思える。

 

特に、訴訟物が所有権に基づく返還請求権の場合はともかく、賃貸借契約等の終了に基づく返還請求の場合は、被告による土地の占有は請求原因とはならない(誰が占有しているかに関係なく、借主たる被告は借りた物の返還義務を負う)ため、いよいよ記載の必要がないように思えてくる。

上記の場合、原告としては、被告が「建物」や「動産」を置いて土地を占有しているということを主張・立証する必要がないからだ。

 

しかし、実務上の対応としては、「建物収去」や「動産収去」についても記載せざるをえない。

プロの弁護士がこれらについて全く書かないとなると、裁判官や書記官からは「こやつ常識がないんか」的な反応をされてしまうだろう。

必須とはいえないまでも、紛争の実態理解に役立つ情報ではあるし、何より、冒頭に述べたとおり、書いておいた方が執行の際の便宜にも資することは間違いないのだから。

 

とはいえ、特に「動産収去」に関しては、目録で一切合切を特定することは困難な場合も多い。

ゴミやら名前もよくわからないものやら、実に雑多な物が残置されている場合があるからだ。逐一名称や個数を記載することは不可能だ。

このようなケースの場合、私は①具体的に列挙できそうな物は一通り列挙したうえで、②別紙物件目録記載の土地上に存する上記以外の動産全て、という具合に記載する方法をとっている。

この記載方法で書記官から弾かれたことはないが、他の弁護士はどんな書き方をしているのかな?