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雑記:転借人への明渡請求と弁論併合上申

 

教科書レベルではごく普通の知識なんだけど、いざ訴状を書くとなんか気持ち悪いな。

無断転借人に対する建物明渡請求って、訴訟物は、所有権に基づく返還請求権としての建物明渡請求権になる。

請求原因としては、端的に①原告の建物所有、②被告の建物占有だけを指摘すれば十分なはずだ(最判昭和26・5・31民集第5巻6号359頁)。

でも、いざ書くと違和感MAXだ。

肝になる争点は「転貸の承諾があったか」又は「無断転貸が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるか」のはず。

ところが、訴状の上では、全くそんな論点は浮かび上がってこない(被告側の反論が載っていない訴状なんだから、当たり前のことなんだけども)。

 

違和感の原因は、弁論併合上申がしにくいって点だな多分。

今回のケースだと、まず先に賃借人に対する明渡請求訴訟(訴訟物は賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての建物明渡請求権)が先行していた。

この賃借人が、こともあろうに転貸の事実を自分からゲロッたので、やむなく転貸人に対しても明渡請求訴訟を提起し、弁論併合上申しようというのが、現時点の状態だ(※本来、占有移転禁止の仮処分も対応した方が良いんだけど、大人の事情により、今回は割愛している)。

弁論併合するか否かは裁判所の裁量次第なので(民訴法152条1項)、原告側としては、せめて事実関係や争点の共通性を説得的に主張しないと、併合してもらえない。

違和感の正体はこれだ。

全然違う訴訟物、請求原因を書いても、結局、関連事実だなんだとして、無断転貸がどうとか、契約解除がどうとか主張しなければならないのだ。

 

あと、固定資産評価証明書と不動産登記事項証明書の再提出はマストかな?併合前提で省略を許してくれないか、書記官に相談してみよう。

 

なお、賃料相当損害金の訴訟物については、不当利得返還請求権を選択するパターンもあるそうだが、実務では、不法行為に基づく損害賠償請求権を選択することが一般的だ。