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内容証明について②

弁護士の阿部士義信です。

 

団堂に続き、内容証明に関して私からも少しお話をさせていただきます。

 

弁護士によって、また事件によって、内容証明のスタイルは本当にバラバラです。

 

まず内容証明の標題、タイトルについて。

 

「請求書」「通知書」「催告書」「回答書」といったあたりが典型的ですね。

 

タイトルに過度にこだわる必要はありません。

何もつけないというのでもOK。

重要なのはあくまで本文です。

 

タイトルを入れる意味としては、文章としての「締まり」を出すこと、相手に対するインパクトといった点が挙げられます。

 

例えば、相手が違法又は不当な行為に及ぼうとしている場合に、これを止めたいときは「警告書」というタイトルを使うことがあります。

「御願い」とかいうタイトルよりは心理的な効果が強そうですからね。

 

頭語・結語について。

 

ぶっちゃげ入れなくても問題ありません。

重要なのはあくまで本文です。

 

「冠省・草々」、「前略・草々」といった辺りはよく目にしますね。

 

「拝啓・敬具」、「謹啓・謹白」などはほとんど見かけません。

 

というのも、内容証明というのは一般の方からすると、「合法的な脅迫文」みたいなものです。

「うわ怖ええ」「何かやべぇのきた」という具合で、もらっただけで軽くパニックな代物なのです。

 

そんな手紙に「拝啓・敬具」、「謹啓・謹白」と書いてしまうと、中々のサイコ感が漂いますよね。

 

「誠に恐れ入ります」「大変申し訳ございません」とか言いながら日本刀をブンブン振り回すような謎ギャップです。

 

そもそも、「拝啓・敬具」、「謹啓・謹白」で送りたい相手、気を遣う必要がある相手には、内容証明など送りません。

普通郵便とか特定記録ですね。少なくとも私ならそうします。

 

構成について。

 

私はあんまり重要だと思っていません。

大切なのは「要するに何が書いてあるのか」です。

 

あくまで経験上の話ですが、趣向を凝らして作ったことで、何か特別良い流れになったという記憶がありません。

 

早期解決につながったとか、相手がビビッて対応が変わったなどという覚えがないのです。

 

個人的には、変なこだわりで時間をかけて構成を練るよりも、必要十分な記載事項を盛り込んだら、さっさと送ってしまうべきだと思います。

 

相手の出方を窺ってから、作戦を変更するという場合だってあるわけですし。

そういう意味でも、交渉の入り口段階で、あんまりかっちりと土台を固めるべきでないというのが私の見解です。

 

構成にこだわる理由があるとすれば、早々に訴訟提起に踏み切ることが予想されるようなケースですね。

 

訴訟提起の場合、裁判所に提出する訴状に書くべき事項と構成というのは、ある程度法律で決まっています。

 

近々に訴訟提起を見越している場合には、訴状の構成を意識して内容証明の文面を作成していきますね。

訴状と内容証明とで構成を変えてしまうのは、労力と時間の無駄ですから。

 

文体について。

 

交渉の余地があるケースの場合は、丁寧めな敬語を使います。私の場合。

ある程度は機嫌をとって、話し合いに応じてもらう必要があるので。

 

そんな余地はなくて、単に手続き上の必要があって送る場合、敬語は使わないですね。私の場合。

 

これには、依頼者へのアピールという意味合いもあります。

しょうもないことかもしれませんが。

「相手にヘコヘコしてませんよ」「戦う気マンマンですよ」というパフォーマンスですね。

 

でもさすがに丁寧語は使いますよ。ですます調の。

タメ口で相手を恫喝するような文章を書こうものなら、弁護士会から懲戒されかねませんから(弁護士職務基本規程6条等が関係するか。)

 

 

「美しく格調高い文体で」などと格好つける必要はありません。

淡々と書くべきことが書かれた手紙の方が、簡潔・平易・明快であり、インパクトも強いような気がします。

 

敬称について。

 

相手方が女性の場合、「貴女」とするか「貴殿」とするか、弁護士の中でも意見が分かれるところです。

 

私の個人的見解としては、「貴殿」を用いるべきだと考えます。

 

理由は

・使い分けがめんどくさいから、

・性別を殊更に強調する実益がないから、

・他業界のビジネス文書も「貴殿」パターンが多いから

ですね。

 

もしも相手方が

「辞書によれば『貴殿』は男性にしか使わないんですがwwそんなことも知らないんですかww」

的なしょうもないマウントをとってくるタイプだったとしても、何も弊害はありません。

 

そんな相手方と交渉しても時間の無駄です。

さっさと訴訟提起しちゃいますね。

その場合、相手方は「貴殿」でも「貴女」でもなく、「被告」と書かれた訴状を受け取ることになるわけです。

 

 

※この連載はフィクションです。実在の人物、団体及び事件等とは何ら関係がありません。