・問題
法人に対する意思表示を書面で行う場合、宛名として、法人名以外に代表者名を付記しなくとも問題ないか?
・結論
問題ない。
・問題の所在
契約書や訴状等の書類には、法人名だけでなく必ず代表者名も付記される。
法人に対する意思表示においても、代表者名を付記する必要があるのではないか。
・検討
1.契約書に代表者名を付記する趣旨
契約書に代表者名を記載する趣旨は、後に契約の成否や有効性が争われた場合に備えることにある。
すなわち、法人そのものが契約書に記名・押印することはできない。
実際には、自然人が記名・押印することになる。
この自然人は、正当な代表権(代理権)を有する者でなければならない。
代表者名を付記することは、法人の記名・押印を正当な代表権(代理権)者が行なったことを示す一つの証拠となる。
理論的には、代表者名を付記せずとも、契約は有効に成立している。
2.訴状に代表者名を付記する趣旨
民事訴訟法・同規則には、訴状に法人の代表者名を記載すべき旨規定されている。
その趣旨は、手続の適法性・有効性を担保することにある。
すなわち、法人そのものが訴訟追行をすることはできない。
実際には、自然人が出廷・主張・立証等を行うことになる。
この自然人は、正当な代表権(代理権)を有する者でなければならない。
被告が法人の場合にも、訴状に代表者名を付記して、資格証明書を併せて裁判所に提出することが求められる。
正当な代表権(代理権)者が存在すること、それが誰なのかを特定することで、その後の手続が違法・無効となるリスクを回避できるためである。
3.法人に対する意思表示を書面で行う場合
上記1や2の趣旨は妥当せず、法令上も、代表者名の付記は要求されていない。
したがって、この場合に代表者名を付記する必要はない。