弁護士法人フィクショナル・公式ブログ(架空)

架空の国の架空の弁護士によるブログ

改正相続法が施行されました(一部除く)

弁護士の我松衰です。

 

令和元年7月1日、改正相続法(一部除く)が施行されました。

パチパチパチパチ。

 

約40年ぶりの大改正です。

 

「改正相続法の概要を知りたい!」ということでしたら、既に詳細を分かりやすく解説しているHPがいくらもございます。

 

当記事では「ぶっちゃげどうなのこの改正?」という点について、私の感想を簡単に書いてみたいと思います。

改正点は多岐にわたるのですが、特に一般の方の関心度が高いと思われるものを取り上げました。

 

新制度について、どんな問題点があり、それをどのように解決していくべきか、実務の中で少しずつクリアになっていくことと思います。

 

今後、当記事に書かれていない重大な問題が露見することもあるでしょう。

他方、ここに書く私の懸念が実は大して問題にならないということも大いにあり得ると思います。

 

1.配偶者居住権

令和2年4月1日以降に作成された遺言又は同日以降に発生した相続に適用されます。

「遺言や遺産分割協議で定めることにより、残された配偶者にはそのまま家に住み続ける権利が認められます」という制度です。

ものすごいザックリした説明ですが。

配偶者が立場上は強くなります。

ただ、配偶者の保護が厚くなったために、親子関係が悪いケースだと、残された配偶者が子どもから冷遇されるなどの懸念もあると思います。

不動産を自由に売却できなくなるという問題もあります。

残された配偶者が認知症を罹患している等の場合、特に困難でしょう。

配偶者居住権の設定された不動産を売却するためには、権利者自身がこの権利を放棄する必要があります。

認知症を罹患している等の場合、有効に放棄できない可能性があります。

この場合、後見人を選任しなければなりません。

後見人の権限で居住権を放棄できるのか。しかるべき対価を受け取れば可能なのか。

このあたりはよくわかりません(私が不勉強で知らないだけかもしれませんが)。

施設に入るとかそういう場合に家の売却を検討する方も多いことでしょう。

今後はその手続きが煩雑になるおそれがあるやに思われます。

また、居住権を無償で放棄した場合、不動産の所有者(大抵のケースでは子どもになるでしょうか)には贈与税が課されることになるでしょう。

悲しいかな、残された配偶者が他の家族から「厄介者」扱いされるケースも出てくるのではないでしょうか。

そのあたりのトラブルが発生しないか気がかりです。

あとは「手続がめんどくさくなりそうだなぁ」、「かったるいなぁ」というのが本音です。

 

2.自筆証書遺言の①方式緩和と②保管制度の創設

①方式緩和については、平成31年1月13日以降に作成された遺言に適用されます。

「遺言書に記載する財産の目録は、手書きで書かなくてOKです」という制度です。

②保管制度については、令和2年7月10日から施行されます。

「作った遺言書は法務局で保管してあげます」という制度です。

ぶっちゃげ弁護士としては「どうでもいい改正だな」というのが本音です。

改正対象は「自筆証書遺言」、すなわち手書きで作る遺言書です。

弁護士は通常、「自筆証書遺言」ではなく「公正証書遺言」の作成をお勧めします。

公証役場が関与して作成する遺言書のことですね。

こちらの方が、遺言無効等を主張されたり、誤りが起きるリスクを抑えられます。

「自筆証書遺言」は、通常は弁護士が推奨しない方法ですから、その意味で本改正については「どうでもいい」というのが率直な感想です。

ところで、第三者の関与のもと遺言が作られる場合、「公正証書遺言」でなく、あえて「自筆証書遺言」を選択するのって、ごく限られたケースじゃないかと思います。

例えば認知症が酷いケースで、誰か身内が

「自分に有利な内容の遺言を書かせたい」

「でも認知が入ってるから、公正証書で作ると公証人から止められるかもしれない」

「自筆ででっちあげよう!」

とか考える場合くらいじゃないですかね。

非常に言い方悪いですが。全くもってけしからんことです。

 

3.遺留分制度の改正

色々と変わりましたが、今のところ、さして特筆すべきことはないように思います。

処理が若干簡明になり、その点で少し仕事がしやすくなったかなということくらいです。

 

4.相続人以外の者の貢献への配慮

「相続人でなくても、介護等により貢献した人は、一定の場合に遺産をもらえます」という制度です。

一見すると仁義に適った制度ですね。

ただぶっちゃげこれについては

「マジ無意味」

「余計なことしやがって」

「説明と説得の手間が増えるだけじゃボケナスが!!」

という感想しか出てきません。

理論上は従来の寄与分制度とそう変わらないようです。

でも、寄与分もそうだけど実務上はその主張・・・

通りませんから~~~!!

ざんね~~~~ん!!!

ジャカジャ~~~~~ン!!!

制度説明の書籍や勉強会にかかる時間と費用、相談者・依頼者への説明に要する時間と労力、交渉時の争点が増えることで割かれる時間と労力、対するに、ほとんど報われることのない介護者達・・・。

さしたる利点に乏しく、かえって社会的コストばかりをいたずらに増大させる、大変有り難い素敵な法改正だと言わざるを得ません。

 

立案担当者に告ぐ!!

 

無駄な改正してんじゃねぇぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!ゴルァァァァァァァァァァ!!!!

 

・・・・・・

 

立案担当者は、書籍出版とか講演依頼でホックホックでしょうよ(多分そうですよね、そうなのかな)。

 

でも、こちとら「しょうもない」改正をいちいち勉強し直して、依頼者・相談者に解説して、実務でも取り扱っていくわけです。

 

無駄なことさせるんじゃねぞぉぉぉぉぉ!!!!てめぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

 

いたずらに社会的コストを増大させるだけの有害無益な法改正は厳に慎んでいただきたい。

 

もっと社会のためになる改正をしましょうよ。

 

建前としては美しいと思いますよ。

「相続人以外の者の貢献への配慮」なんて。

素敵じゃない。

そら一般の方でこの改正に怒る人は少ないでしょう。

「けしからん改正だ!」とか怒ろうものなら「人の心がないヤバイ奴」、「金の亡者」とかいう誹りを受けるのは免れないでしょう。

でも、この制度の実態は上記のとおりだと思うんです。

「無駄だなぁ」というのが、実務に携わる一弁護士としての正直な感想です。

それどころか、社会的コストの増大という点で「有害」ですらあると思います。

 

建前で物事を進めるのはやめにしましょうよ。

全国民の生活に影響を及ぼす重大事なんですから。

実態に即して進めて欲しいものです。

立案担当者は私なんかより遥かに頭の良い人達でしょう。皮肉でも何でもなく。

そんな人達が時間とお金をかけて取り組むわけですから。

相応の成果を期待したいものです。

頼みますよ、お偉方の皆様。

たべっ子どうぶつ、一つあげるからさぁ。

 

 

※この連載はフィクションです。実在の人物、団体及び事件等とは何ら関係がありません。