弁護士業界において重要な三大能力は、コミュ力、強メンタル、そして文章力だ。
リーガルマインド(法適用の判断能力)は、上記三大能力よりも実は重要度が低い。
弁護士は皆薄々感じていることだ。誰も大っぴらにそんなことは言わないけども。
今日は、文章力なるものについて思うところを書いていく。
「上手い文章」とは何なのか。実に難しい問題だ。
おそらく「どんな目的で誰に向けて書く文章なのか」によって、「上手い文章」のイメージは異なってくるだろう。
例えば
・依頼者の主張を認めさせる目的で、裁判官に向けて書く準備書面。
・社内稟議をサポートする目的で、一般のビジネスマンに向けて書く意見書。
・弁護士の説明義務を果たしつつ、言い訳がましい印象を与えないよう、依頼者に向けて書くリスク説明のメール。
・捜査機関による取調べに備えるため、知的障害を抱えた被疑者に向けて書く助言書。
場面に応じて書くべき文章のイメージは全く異なってくる。
状況に合わせて文体を変えることが大事だ。
この状況判断をする能力というのは、いわば「メタ文章力」と言えるかもしれない。
このように、状況によって「上手い文章」のイメージは異なる。
しかし、多くの状況で共通するコツもある。
例えば
・簡潔にまとめる。
・文章間や段落間の論理的繋がりを意識する。
・一文一義。
・一文は概ね60文字以内。
といったところか。
ちなみに、裁判所に提出する準備書面の場合、特に留意すべきコツは以下のとおり(私独自の見解ではなく、複数の裁判官の意見や業界アンケートを参考にしている)。
・10頁以内にまとめる(複雑な事件や大事件でもない限り、10頁を超える準備書面は殆ど例外なく「ゴミ」だと裁判官は口を揃える)。
・細かくナンバリングをする。
・ナンバリング毎に簡潔な表題をつける。
・1つの表題につき、記載する文章は10行程度以内に収める。
・常に要件事実との関係を意識して書く。
といったところだ。
(ちなみに、準備書面の標準的な書式は1行あたり37字、1頁あたり26行だ)
ところで、私のブログに対して「そもそもお前の文章が下手やないかい!」などというアレなツッコミが入ることもあるかもしれない。
しかし、前述のとおり、「どんな目的で誰に向けて書く文章なのか」によって、「上手い文章」のイメージは異なる。
私のブログは、私自身の自己満足を目的として、私とごく少数の酔狂な読者に向けて書かれた文章だ。
私が「上手い」と思えば「上手い」のである。