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某教授の小咄【判例の「格」】

某教授

「……本来なら四畳半襖の下張事件は判例変更、もしくは判例の書き換えを事実上やっているわけですよね。チャタレイ、悪徳の栄えから見て、ものすごいわいせつ概念の相対化をしているわけです。だから本来ならこれ大法廷にかけなければいけない事案だったんです。ところが、当時大法廷は混んでたんですね。これ、みなさん重要なポイントですよ。これも皆さん、判例を読むときに裁判官に注意してくださいということを言いましたが、時期にも注意してください。この時、大法廷に何がかかっていたか。最高裁史上最も重大な事件がかかっていた時期なんですね。誰か知ってる人いますか。判例百選をざっと見ていただければわかると思うんですけれども。これは、最高裁がトラウマになっていると言われている事件ですね。これをやってしまったためにその後最高裁は大法廷開きたくなくなったと言われるだけの大事件です。誰かわかる人?ヒントは行政法でやっているはずです。」

 

某学生

「大阪空港事件です。」

 

某教授

「そうですね。大阪空港事件、皆さん読んでいただければわかると思うんですけれども、はっきり言って判決文何書いてるかわからないんです。たぶん理屈が三つか四つぐらい混在する多数意見なんです。これはもう裁判官が十五人集まって議論すればする程話がぐちゃぐちゃになっていく。何とかまとめなきゃいけないと思っている間に裁判官がやめて入れ替わってまた議論するとぐちゃぐちゃになっていくということで、何度大法廷を開いても話の纏まりがつかない。しかもぐちゃぐちゃになっていく。みなさんも会議を開くということを考えたらわかると思うんですが、十五人の裁判官が集まって会議するとなると、裁判官の準備も大変ですし事務方の準備も大変で、それだけいろんな機能がパンクするわけですよ。しかも決着がつかない。ぐちゃぐちゃになっていく。見通しがつかないということで、もう混んで混んで仕方ないわけです。あの事件がトラウマになって、最高裁は大法廷を一切開かなくなったんです。つい最近までずーっと開きたくなくなってつい最近になってトラウマが薄れたらしく開くようになった(笑)。話を戻しますと、だからもういいや、小法廷でやっちゃえということで、やったということで、実際に判例変更、実際には中身の書き換えなんだけどえいやとやってしまったわけですね。ここで、四畳半事件を先例として認めないという考え方が出てくるわけです。こんなの勝手に小法廷が書いたものだ、大法廷の考え方をひっくり返すような、事実上書き換えているようなものは認めないという、そういうガンバリがでてくるわけですね。よろしいですか。どの判例を引用しているか、もう一つは判例の格ですね。大法廷か小法廷か、もちろんそれだけじゃないですが、これはどの分野でも注意していただきたいことです。あまりこんなネタみたいな話ばかりしてもしょうがないですね。」