フィンランドの若手天才指揮者クラウス・マケラの出世ぶりが凄まじい。
1996年1月生まれで現在28歳。
3年後の2027年から、ロイヤルコンセルトヘボウの首席指揮者兼シカゴ交響楽団の音楽監督に就任することになった。
就任時にはまだ31歳だ。
クラシックに興味のない方には、これがどれほど凄まじいことなのか、多分ピンとこないと思う。
いや、それ以上かもしれない。
上記2つの楽団は、世界でも三本の指に入るスーパーオーケストラだ(もう一つはベルリンフィル)。
その2つの楽団のシェフを、30そこらの青二才が兼任するというのだ。
正気の沙汰ではない。
伝統的には、指揮者というのは、40代くらいまでは歌劇場で下積みを経て、徐々にコンサートも振るようになる、といったスタンスが主流だったようだ。
伝説的な指揮者カルロス・クライバーも、若手指揮者達に向けて、そうしたキャリアの積み方を推奨していた。
指揮者というのは、才能だけで務まるものではなく、経験が大きくものを言う仕事だ。
コンセルトヘボウもシカゴも「血迷ったのか?」としか思えない。
マケラが天才なのは間違いないのだろう。
しかし、圧倒的に経験が足りていない。
最近も、ラフマニノフのコンチェルトで共演したプレトニョフから「君は音楽を分かっていない!」などと批判されたというのを、何かで読んだ覚えがある(一次ソースが出てこない……)。
若いうちは失敗してもキズにならない経験の場をもっと持つべきだろう。
また、彼が才能を浪費してしまわないか心配だ。
極めて多忙な公演スケジュールの合間を縫って、作品研究を深める時間を確保できるのだろうか?
心身ともに疲弊しきってしまうのではないか?
病弱だったマリス・ヤンソンスが、コンセルトヘボウとバイエルン放送響を兼任してしまい、晩年に凡演を乱発していたことは記憶に新しい(これには多々異論もあるかもしれないけど。私は、ヤンソンスは才能を浪費して早死にしてしまったと確信している。)。
新陳代謝の進まない日本の芸能界も考えものだけど、若手スターを客寄せパンダとして浪費するかのようなコンセルトヘボウとシカゴの経営判断には、素人目にも「本当に大丈夫?」と心配になってしまう。