小澤征爾の訃報後、氏のドキュメンタリー映像をYouTubeで観ている。
近々Eテレあたりが特集を組むだろう。
ドキュメンタリーの幾つかで、チャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」が演奏されていた。
子どもの頃、この曲の冒頭が明るいのか暗いのかで、母親と議論(≒喧嘩)したことを思い出す。
私は「暗くて悲劇的でショッキング」と感じていた。
母は「朗々とした華やかな輝かしさ」を感じていた。
後になって正解が判った。
二人とも間違っていなかった。
1〜4小節目の頭までを見てみると…
旋律(横の流れ)は
「ドーシーラーソラドソーファーミ」
という堂々たるハ長調(C)だ。
他方、コード進行(縦の線)で見てみると、こんな感じだ。
「Am、CM7/G、F、C/E、F、C/E、Gsus4/D、G、G7、E7/G#」
開幕1音目のAmが悲劇的で、2音目のCM7/Gも胸を締め付けるような不安感がある。
三音目のFはサブドミナントであり、音楽の向かう先がわからず不安なままだ。
C/E、F、C/Eで小刻みに移ろい、安心感が得られない。
曖昧なGsus4/Dから、ドミナントのGに移る。
ここでトニックに戻って安心したいのに、G7で若干の不安感を煽られ、更にE7/G#でまた何かに手が届かぬまま離れていってしまうような喪失感がある。
そう、二人とも間違っていなかったのだ!