債務整理の受任にあたっては、原則として、弁護士自らが債務者本人と面談しなければならない(債務整理事件処理の規律を定める規程3条1項)。
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_93r.pdf
したがって、弁護士が事務員等に債務者との面談を丸投げするのはNGである。
また、債務者本人と面談せず、その家族や知人等との面談で済ませるのもNGである。
(なお、「面談」は直接相対しての形でなければならない。テレビ電話等のリモート会議は「面談」に当たらないというのが、日弁連の見解だ。)
ただし、例外として、「面談することに困難な特段の事情があるときは、当該事情がやんだ後速やかに、自ら面談をして、次に掲げる事項を聴取することで足りる」とされている(同但書)。
この但書の規定ぶりは、どうにも歯切れが悪い。
「当該事情がや」まないと予想される事案では、債務整理の受任はNGなのだろうか?
例えば、債務者が、重度の社交不安障害(対人恐怖症)やパニック障害、うつ病、その他何らかの重い病気を抱えている場合。
弁護士との面談ができるとは限らない。
このようなケースでは、受任からクローズ(委任事務の終了)まで、一度も債務者本人と面談ができないことも考えられる。
こうしたケースにおける面談を経ない受任の可否については、但書の規定ぶりからも、日弁連の会員向けの「お達し」からも、全く正解を読み取ることはできない。
弁護士側の「論理」でいえば、そんな「面倒」な債務者から受任するのはリスクでしかなく、面談義務を果たせないことを理由に一律受任を断るというのも一つの「正解」だ。
しかし、それで良いのだろうか。
こういう困っている人にこそ救いの手を差し伸べることが、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」という弁護士の使命に適うのではないか(弁護士法1条)。
(まぁこういう「臭い」理想論を掲げて突っ走ると、手痛い「裏切り」に遭うこともママあるわけで……。)