1月9日、作曲家の松平頼暁氏が亡くなった(91歳没)。
2001年に亡くなった同じく作曲家のお父上(松平頼則氏)もご長命だった(94歳没)。
お二人とも刺激的な前衛音楽の世界を探究された方だった。
お父上の方が国際的な知名度は高かったかと思うが、個人的には、頼暁氏の作品に特に心惹かれていた。
YouTubeに直近のインタビュー動画が上がっており、頼暁氏の音楽観をご本人の肉声で聴くことができる。
大変貴重な(マニア心をくすぐる)動画である。
このインタビューを視聴して思うのは「頼暁氏は戦後前衛第一世代の典型的なマインドの持ち主」ということだ。
戦前・戦中の精神論的な教育思想や情念的なるものに対して、強い嫌悪感・不信感をお持ちなのだ。
一般に、前衛音楽に対しては「感情を欠いた頭でっかち」という紋切り型の批判が付いて回る。
しかし、頼暁氏をはじめとする戦後前衛第一世代からすれば、上記のような言辞は批判でも何でもない。
「そうですよ、それが何か?」というくらいのものだろう。
精神論や感情と距離を置いた音楽を敢えて書いていたのだから、当然のことだ。
前衛の衰退という世界的な潮流にあっても、我々一般聴衆や時代に迎合するような「ぬるい」音楽を書くことは決してなかった。
このような「とんがった」「かっこいい」「ロックな」戦後前衛第一世代の大物は、残すところ湯浅譲二氏くらいだろう(世代はともかく、共有するマインドという面で、篠原眞氏や間宮芳生氏もこのグループに入るのかは、私にはちょっとわからないが)。
また一人、かっこいい人がいなくなってしまった。
謹んで哀悼の意を表します。
合掌