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雑記:遺留分と不当利得返還請求権

 

○前提

1.被相続人が相続人Aに対して不当利得返還請求権を取得した

2.被相続人は相続人Aに対して全財産を相続させる旨の遺言を作成

3.被相続人の死亡&同遺言により相続人Bの遺留分が侵害された

(※1は、2を時系列的に前後する形で複数回発生。)

 

○論点

不当利得返還請求権は、混同により消滅せず、遺留分侵害額請求権の目的となるか(遺留分の金額算定の基礎となるか)。

不当利得返還請求権が、混同の例外、すなわち「第三者の権利の目的であるとき」(民法520条但書)に該当するかが問題となる(正面からこの論点について判断した裁判例はなさげ)。

 

○メモ

被相続人が、生前に不当利得返還請求権を債権放棄していた場合、この債権放棄(=債務免除)は、生計の資本としての贈与たる特別受益に該当するものとして、遺留分算定の基礎にされる可能性がある(高松家裁丸亀支部平成3・11・19家月44巻8号40頁等)。

・仮に、不当利得返還請求権が混同により消滅すると解した場合、遺留分侵害者としては、被相続人の存命中に、無断で資産を受領・費消等してしまうことにより、遺留分侵害額請求を免れることが可能になる。

遺留分制度を骨抜きにする脱法行為を認めるに等しい結果をもたらす。

このような結論は、不当利得返還債務の免除が、特別受益に該当するとして、遺留分算定の基礎にされ得ることとのバランスから言っても極めて不合理な帰結である(※被相続人が利得を許容した場合には、支払義務が加重され、被相続人の承諾なしに利得した場合には、支払義務を免れるというのは、明らかにおかしい。)。

民法520条の文言の素直な解釈からいっても、混同の例外にあたると考えてよさそう。