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ジョジョと法律【キンクリと過失】

弁護士の阿部士義信です。

 

皆さん、ジョジョの奇妙な冒険はお好きですか?

 

私は大好きです。

 

ジョジョに登場する

ジョナサン、ジョセフ、ワムウ、偽テニール船長(お前本名何やねん)、ウエストウッド看守等々…

数多のマッチョキャラに憧れ、日々鍛錬に励んでおります。

 

作者の荒木先生は非常に博識でいらっしゃる。

 

物理学とかのよくわかんない概念なんかを、ストーリー展開やキャラクターの能力に応用しているとかなんとか。

 

雑学的・豆知識的な小ネタが多いですよね。

 

そんなジョジョですが、意外と指摘されていないのが

 

荒木先生、刑法総論かなんかの教科書を読んだことあるんじゃないの?」

 

という点。

 

私が「おやっ」と思ったのは

 

キングクリムゾンの能力「過失」の概念 の類似性というか共通性です。

 

「過失」というのは、一般的な理解によれば、危険な結果の発生についての予見可能性がありながら結果回避義務に違反することをいいます。

 

・・・・・・

 

説明が下手ですみません。

 

これだと全然わからないですね。

 

1.「過失」とは何か

 

「過失」というのは、要するに「わざとじゃない不注意」です。

 

では、どんな場合に「不注意」があったとされるのか。

 

まず、危険な結果の発生が予見できる場合でなければなりません予見可能性

 

例えば、車を運転していて、左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとする場合。

 

飛び出し → 事故 が予見できますよね。

 

こういう場合は予見可能性ありとされます。

 

そのうえで、危険な結果を回避する措置をとったか(結果回避義務違反)

 

これを怠ると「不注意」=「過失」があるということになります。

 

先ほどの例で言えば、左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとする場合、

 

基本的には、結果回避措置として徐行が必要とされ、これを怠って事故を起こせば、「過失」ありとされるでしょう。

 

この徐行義務については、道交法42条1項1号にも規定がありますね。

 

(※間違えやすい点なのですが、「法律上〇〇という義務がある」=「〇〇を怠ると結果回避義務違反にあたる」とか「〇〇をすれば結果回避義務違反にはならない」とは限りません。

 

「過失」の有無と、道交法等の法律上の義務違反の有無とは、あくまで別次元の問題なのです。

 

強いて言うなら「法律上どういう義務が定められているかは、『過失』の有無を判断する重要な考慮要素ではあるけれども、あくまで参考程度」と考えるべきでしょう。

 

さらにややこしい話をすると、同じ「過失」でも刑事と民事とで理解や議論に若干の違いはあります。

 

実際、刑事訴訟では無罪になったのに、民事訴訟では賠償責任が認められたなどというケースもあります。

 

ただ、これは刑訴と民訴の手続の相違であるとか、異なる争点が問題になったとか、何らか他の事情が影響している場合もママあります。)

 

2.キングクリムゾンの能力

 

ようやくここで私の書きたかった本題。

 

キングクリムゾンの能力は

 

①未来を見る能力(予見能力)

 

②時間を消し飛ばす能力(回避能力)

 

の2つです。

 

まず

 

①未来を見る能力(予見能力)

 

十数秒先の未来を見ることができます。

 

ただし、その未来は絶対に変えることのできない、決定論的な未来です。

 

要するに、自分に不利な予知を見てしまったとしても、どうやったってこれを変更することはできません。

 

これだけだとクソ能力ですね・・・。

 

そこで登場するのが

 

②時間を消し飛ばす能力(回避能力)

 

これが強烈です。

 

この能力の説明は非常にややこしく、そして難しい。

正確な理解については決着がついていない部分もあります。

 

ですのであえてざっくり書きます。

 

この能力を使うと、能力者の周囲の空間は、虚ろで実体のないものとなります。

 

この空間を意識的に自由に動けるのは能力者ただ一人です。

 

能力発動中、周囲の人間は、予定されたとおりの行動(①の能力で予見したとおりの行動)をとりますが、実体がない状態です。

 

そのため、能力者に対し攻撃をしかける等しても、攻撃はことごとくすり抜けてしまいます。

また、すり抜けてしまっているということに気づくことすらできません。

 

例えば、能力者が①の予見能力で「敵が自分をピストルで撃ち殺す未来」を見たとします。

 

そこで、能力者は②の回避能力を発動

 

すると、①で予見したとおり、敵は能力者をピストルで撃ち殺す動作をとります。

 

しかし、実体のなくなったピストルの弾丸は能力者をすり抜けてしまい、敵はそのことを認識すらできません(無意識に行動をとっているような状態)。

 

「敵が自分をピストルで撃ち殺す未来」を回避することができるわけです。

 

ジョジョだと、キングクリムゾンの能力者は

 

②の能力を発動している最中、相手の背後にまわり込み、完全に死角に入ったところで能力を解除し、

 

相手があっけにとられている隙に、強烈な不意打ちを喰らわす

 

という戦法をとっています。

 

能力を使われた側からすると

「時間が急に飛んだ」ように感じることから

「時間を消し飛ばす」能力などと表現されています。

 

キングクリムゾンは、この①と②の合わせ技が反則的に強い。

 

①で都合の悪い未来を「予見」したら、

②でその未来を「回避」すれば良いわけですからね。

 

100%「予見」できるし、100%「回避」できてしまうのです。

 

やばいめっちゃ強い。

 

3.キングクリムゾンと「過失」

 

この「予見」と「回避」という枠組みを

過失概念に関する議論を知らずに構築したのだとすると

 

荒木先生、やはり只者ではないなと思いません?

 

何と言っても、①の予見能力について、

決定論的な未来を予見する能力(予見しても未来を変えられない)

と位置付けてしまう、この割り切りですよ。

 

この点に関しては、荒木先生自身、ジョジョ世界がハードな決定論的世界観に基づいている旨明言されていることも忘れてはなりません(刑法に引きつけて言えば、いわゆる新派、近代学派の考え方ですね。)。

よく設定ブレブレとか指摘されますが…。

 

凡百なる漫画家だったら、普通は予見能力と回避能力を分けませんよ。

「予知できるから回避できる」と安直な設定にしてしまうでしょう。

 

少なくとも私はこんなの自力で思いつけない。

 

改めておみそれいたしました。

 

 

・・・それはそうと

 

私のプロフィール「考えることが苦手」なはずなのに、我ながら随分めんどくさいことを書いたものだ。

 

さっ!今日もジョジョキャラみたいなナイスな肉体目指して、筋トレに励むぞ~~。

 

今日も筋肉壊さないと♪

 

 

※この連載はフィクションです。実在の人物、団体及び事件等とは何ら関係がありません。