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団体交渉での対応【使用者側】

団体交渉とは、労働組合または労働者の集団が、使用者側と、労働者の待遇や労使関係上のルールについて行う交渉である(憲法第28条、労働組合法第6条)。

昔の団体交渉は、暴力・怒号など日常茶飯事だったそうだ。

かつてのユニオン(労組)は、共産主義系の武闘派な活動家が多かったのだろう(かなり年配の爺さんらも未だに残党として活動している)。

脅迫・暴行・監禁も辞さない「やべぇ」連中である。

というのも、今は昔。

幸いにして、私が経験してきた団体交渉に関しては、そうした血生臭いケースは一つもない。

比較的落ち着いたテンションで話し合うことが多い。

私が熱血漢などとは程遠いローテンション陰キャだからかもしれないが。

 

団体交渉を行う目的は何なのか。

労組(ユニオン)側にしてみれば「使用者に早期に要求事項を飲んでもらうこと」が獲得目標になるだろう。

他方、使用者側の目的は、かなり消極的なものになる。

「誠実交渉義務違反にならないようにすること」が獲得目標だ。

団体交渉に臨む際、この目的はくれぐれも忘れてはならない。

 

使用者側としては、労組やユニオンを論破しようとしたり、いわんや喧嘩をふっかけることなど、全くもって目的の範疇外だ。

 

事前の準備・理論武装は大切だ。

当日、それなりの回答を用意しておかないと、誠実交渉義務違反になる。

回答書や提出資料は、形に残る証拠になるので、しっかり準備しておく。

 

だが、団体交渉当日の対応に関していえば、「舌鋒鋭い論客」のごとく振る舞うことには、何のメリットもない。

「無能な政治家の答弁」風が望ましい。

ゆっくり喋る。

相手の発言に対しては、いかにも物分かりの悪い馬鹿のように、丁寧に質問し返し、趣旨を確認する。

回りくどくても良いので、落ち着いて回答する。

沈黙を恐れず、必要とあらば長考してから発言する。

そうこうする内に、会場の時間切れになる。

 

「無能な政治家の答弁」風に対応したからといって、誠実交渉義務違反にはならない。

そんな印象論は個人の主観・感想でしかないからだ。

回答書や資料という客観的な証拠の方が重要だ。

これさえしっかりしていれば、問題はない。

 

それと、上記のように考えることは、使用者側として冷静に団体交渉に臨むためにも、非常に重要な視点だ。

ただでさえ、緊張しやすい、おっかない場面に思えるだろうから。