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法的思考(リーガルマインド)について①

〇法的思考の仕組み

ある事案において、法的にどのような結論が得られるか(誰が誰に対しいかなる権利又は義務を負うか)を考えることが、法的思考である。

その仕組みについては、以下のように考えることができる。

1.通説的な理解(演繹法帰納法二元論)
・①規範定立、②当てはめ、③結論という法的三段論法(演繹法)という大枠がある。
・②当てはめにおいて、間接事実の積み上げによる事実認定や、評価根拠(障害)事実の積み上げによる規範的要件に係る事実認定を行う際の推論方式は帰納法である。

2.有力見解(演繹法アブダクション二元論)
・②当てはめにおいては、積み上げられた一連の事実(結果)について、もっとも整合的・説得的な仮説(原因)を推論するアブダクション(仮説推論)が用いられる。

3.私の理解(疑似演繹法一元論)
・法的三段論法も当てはめも、疑似演繹法として一元的に理解されるべきものである。
・法的三段論法は、社会的要請に基づいてシステム化されたフィクションである。大前提である①規範定立においても、小前提である②当てはめにおいても、何ら前提の必然性・確実性がないことから、そもそも厳密な三段論法は成り立たない。法的三段論法とは、いわば疑似演繹法にすぎない。厳密な演繹法を用いると、およそ法的思考というものが成り立つ余地がなくなることから、社会的要請として設けられたのが、疑似演繹法である。
・②当てはめにおいても、疑似演繹法が用いられている。すなわち、事実認定においては、疑似的な大前提として「〇〇の場合、~~である」という経験則が設定される(経験則の普遍性・絶対性を厳密に立証することは不可能である。その意味で、経験則は疑似的な大前提でしかない。)。さらに、証拠を元に一連の事実を積み上げ、当該事案が「〇〇の場合」に該当すること(小前提。これが絶対的に正しいことを証明するのは原理的に不可能である。その意味で、これも疑似的な小前提でしかない。)を示す。これにより、当該事案に経験則を適用することができ、「~~である」という認定を導き出すことができる。

4.自戒を込めた心得
日頃、個々の事案に対応するにあたっては、いかなる仕組みのもと法的思考を行っているのか、よくよく自覚的になる必要がある。
規範定立段階においても、当てはめ段階においても、厳密な論理性よりも、「それらしい」理由付けが求められる。
規範定立においては、形式的な文言理解、先例、実質的なバランス感覚に基づいた法解釈が求められる。
当てはめにおいては、いかなる経験則を設定するのか、明確に言語化できるように思考する必要がある。