クイーンが「ボヘミアン・ラプソディ」を発表した際、驚き興奮したという吉松隆氏。
師の松村禎三氏に「すごい曲があります!」と興奮して紹介したものの「(あまりにも色々なものを詰め込みすぎていて)小賢しすぎる」と一蹴されてしまったそうだ。
他にも、吉松氏は松村氏へプログレなどロックのカセットテープを聴かせたそうだが、「小賢しくてつまらん」との感想だったという。
ただ、そんな中で松村氏が「あれが一番良かった」と述べたのが、ジョン・レノンの「マザー」だったそうだ。
二人の作風を知るリスナーとしては「さもありなん」と深く頷ける話だ。
かたや、プログレ・ゲンオン・ワールドミュージックに根差した、ごった煮的・折衷的な世界観で、トリッキーかつエモーショナルな吉松隆。
かたや、オスティナート(音型の反復)が次第に膨張し、暴力的で巨大な音群が蠢き迫る、晦渋で怨嗟に満ちた松村禎三。
前者が「ボヘミアン・ラプソディ」的な情動の世界だとすれば、後者は「マザー」的な怨念の世界だ。
実に興味深い。
クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」
ジョン・レノン「マザー」