弁護士法人フィクショナル・公式ブログ(架空)

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キュウリ夫人とナスビ旦那

事務局長のジーコ松浪です。

 

現代社会に生きる私達は、これまで先祖達が経験してこなかったドラスティックな環境変化にさらされています。

また、これに伴い、複雑多様な問題の解決を迫られております。

 

生命倫理と法の在り方、暴走する科学技術の問題点等、解決すべき課題は枚挙にいとまがありません。

 

 

そんななか、大変に興味深いニュースが飛び込んできましたので紹介しましょう。

 

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先日、ノーヘル賞の授賞式が執り行われました。

 

中でも話題になったのは、ノーヘル化け学賞を受賞したキュウリ夫人とナスビ旦那。

 

この二人、地元ポーランドでは「独自の世界観に基づくシュールな舞台」で好評を博す人気演劇ユニットだ。

 

代表作は「コント:田舎のお盆」。

「田舎暮らし」に憧れ、都会から移住してきた若い科学者夫婦。

村のしきたりを知らないために、「よそ者」として、村人達から陰湿な嫌がらせを受けてしまう。

復讐を誓った夫妻は、村中の田畑に枯葉剤を散布。

村中のキュウリとナスビを枯れさせてしまう。

極め付けに、お盆時期、自分達に肉体改造を施し、キュウリ人間とナスビ人間となって、村中の家々を襲撃して回る。

復讐を果たし、快哉を叫んだのも束の間、元の人間に戻れなくなった夫婦は、とうとう言葉も喋れず、動くこともできない、巨大なキュウリと巨大なナスビに変化してしまった。

全てを悟った村人達は自分達の行いを後悔。

以後、夫妻は「キュウリ夫人とナスビ旦那」として、村で崇められ、毎年お盆時期には豪華なお供え物とともに、お祭りが執り行われるようになった。

 

・・・我々一般人にはまるで理解しがたい、笑いどころ皆無の不条理系コントである。

 

もっとも、本作について、玄人筋からは「科学技術のむなしさを切々と訴える名作」、「地域格差や差別問題に対する痛烈なアンチテーゼ」、「権威を打ち倒した者が新たな権威となり果てる、典型的人間社会に対する秀逸な皮肉」などと激賞の声が絶えない。

 

さて、そんなキュウリ夫人とナスビ旦那、「コント:田舎のお盆」を発表した後、なんと実際にも元の人間には戻れなくなっている。

劇中の展開とは異なり、喋れるし、動くこともできるが、見た目は完全にただの「手足が生えた巨大なキュウリとナスビ」だ。

 

そんな異常な夫妻だが、正真正銘本物の「キュウリ夫人とナスビ旦那」となった現在も、地元ポーランドにて、地道に営業をこなし、TV番組にも多数出演。ファンとの交流や各種イベントへの参加も頻繁で、各地で親善大使を務めるなど多忙な日々を送っている。

 

最新の科学的知見を活かし、危険を冒して自らに改造手術を施すという、その覚悟と技術力、無謀さ、現在に至るまでのヒューマニティ溢れる一連の活動が評価され、この度の「ノーヘル化け学賞」受賞に至った。

 

ノーヘル賞の賞金は7300円。

賞金の使い道を尋ねられた夫妻は、「もっと質の良い堆肥が欲しい」、「早く元の姿に戻りたい」などと、満面の笑みを浮かべ、気さくにインタビューに応えた。

 

 

 ※この連載はフィクションです。実在の人物、団体及び事件等とは何ら関係がありません。