弁護士の我松衰です。
"この目で観たとは言わないが!"
"明かしてみせますその実態!!"
さて、始まりましたこのコーナー
"妄想辛口映画批評"
私、我松が、観てもいない映画について、内容を勝手に妄想、レビューして参ります。
記念すべき第1作目はこちら!
「グリーンブック」!!
天才黒人ピアニストのチャベス・マルコムと
彼をガードする腕利きのイタリア系移民用心棒ジローラモ・コルレオーネ。
そんな二人の熱き友情を描いた痛快悲喜劇。
監督・脚本は、小難しい映画を撮らせたら右に出る者はいない、あのクリストファー・ノーラン。
チャベス役をモーガン・フリーマン、ジローラモ役をロバート・デニーロが演じ、
脇役陣は、エディ・マーフィーやタリア・シャイアら実力派で固めるという豪華布陣。
リアリティにこだわった本作。
ジローラモがチャベスを銃撃から守るシーンでは、本物の拳銃が使われたとのこと。
デニーロは実に16発もの実弾を身に浴びながら、演技を続けたそうです。
いやはや、彼らの役者魂には頭が上がりません。
2018年アカデミー賞作品賞を見事受賞したことでも話題となりました。
本作を巡っては「アカデミー賞の揺り戻し」との声も聞かれたところです。
すなわち、ここ数年は、ポピュラリティは低くとも芸術性の高い作品がオスカーを勝ち取るという傾向が顕著でした。
試みにググって作品賞受賞作を遡ってみてください。
知ってる作品はどれだけあるでしょうか?
そんな流れから一転、2018年に至って
「ポピュラリティも芸術性も高い作品が受賞作となった」
という喜ばしい動きが出てきたわけです。
◯作品解説(※ネタバレ注意)
本作の問題意識は
「私たちはどうやって『他者』と向き合うべきか」
という点にあります。
人種、ジェンダー、出自、社会的地位、家柄、才覚・・・
どれをとっても、私たちは互いに異なった存在です。
子ども時代に思い描いた「人間同士の同質性」というものが、実は全くの「幻想」だったことに、誰しもが人生のどこかで気づくもの。
そんな本作の斬新な点は
「ハリウッド作品でありながら、主要キャストが一言も英語を話さない」
ことです。
ジローラモはイタリア語しか話せません。
更に驚くべきは、何と彼らの台詞には字幕すら表示されず、私たち観客にも彼らが何を話しているのか全く理解出来ないことです。
さすがはクリストファー・ノーラン。
やることがイチイチ実験的です。
劇中、エディ・マーフィー演じる運転手が、イタリア語とスワヒリ語の通訳を連れてきますが、彼らの意思疎通は叶わず、相互理解の試みは失敗に終わります。
(そもそもどうやってボディーガードを雇った?)
挙句、苛立ちの募った二人は、相手に言葉がわからないのを良いことに、互いに下品(と思われる)台詞で悪態をつきだす始末。
「お前、ピアニストなめんなよ!」
「ナポリ人、馬鹿にすんじゃねぇ!」
罵り合いは、血で血を洗う凄惨な殴り合いに発展。
ひとしきり殴り合った後、彼らはある重要な事実に気がつきます。
「俺、こいつの言ってること、何となくわかるぞ?」
そうなんです。
二人は、互いの表情や身振りから
「あ、自分の悪口を言ってるな」
くらいのことは理解できていたのです。
そのことに同時に気がついた二人。
私たち観客も然り。
字幕も無く途方に暮れながら観ていたのに、彼らが互いに罵り合っていることはわかる!
スクリーンの向こう側の彼らが味わっている「わかるぞ」体験を、スクリーンの外側にいる私たち観客もリアルタイムで共有できるのです!
脱帽だぜ、クリストファー・ノーラン!!
言葉などわからなくたって、立場も違ったって、人と人とは分かり合える!
「真の友」を見つけたジローラモは、喜び勇んでチャベスに仲直りのハグを求めます。
ところが、腕の立つジローラモに殴られたチャベスは、もはや虫の息。
粉々に骨が折れた指では、もはやリサイタルを続けることもままなりません。
世を儚み、将来に絶望したチャベスは、銃口を口に咥えると、引き金を引いて自らの命を絶つのでした。
(あれ、指の骨・・・?)
時既に遅し。
ジローラモは、変わり果てた「真の友」の亡骸を胸に抱きます。
ラストは、ナポリ弁で慟哭するジローラモのロングショットで、映画は幕を下ろすのでした。最後まで何言ってるかわからないけど。
◯作品批評
う〜む、何とも悲しい映画です。
互いに「相手にバレないように嫌がらせ・悪戯をする」シーンなんて、「志村うしろ!」的な馬鹿馬鹿しさがあって、結構笑えるんですよね。
それがそのうち、表情や身振りにもハッキリと嫌悪感が出るようになってしまう。
これによって、二人は「真の友」を見つけながら、同時に、永遠にこれを失ってしまうという、悲しいアンビバレンスに翻弄されるわけです。
人間存在の根本を、真正面から体当たりで描いてみせた本作。
映画の登場人物と私たち観客がリアルタイムで体験を共有できるという実験性。
これを傑作と言わずして何と言えば良いのでしょうか。
強いて挙げるとすれば、後味の悪さが若干の減点要素といったところです。
得点:93点/100点
※この連載はフィクションです。実在の人物、団体及び事件等とは何ら関係がありません。